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『食事で治す』ミヒャールゼン教授にレホルムハウス・クリール誌がインタビュー

Reformhaus Kurier

アンドレアス・ミヒャールゼン教授は、ベルリン・イマニュエル病院自然療法科の著名な医長であり、ベルリン・シャリテ病院の教授です。本誌だけに、栄養の最重要トレンドを分析し、いつどのように食事を変えれば、病気でも驚くほど良い治療効果を上げることができるかを教えてくれます。

イギリスのブリストル出身の17歳の若者は、目が見えず耳が聞こえなくなり、骨が溶けてしまいました。彼の体は奇妙な病気に蝕まれています。医師は原因を探します。めったにない遺伝子の欠陥か、自己免疫疾患か? 彼の体はビタミン不足の状態です。しばらくして、この10代の若者は自分の食事のことを語り始めます。

彼は10年前から、フライドポテト、ポテトチップス、白パン、加工肉だけを食べています。これは栄養不足の極端な症例として、医学専門誌に公表されました。わずか数世代で、私たちの食事は、ほとんど加工されていない新鮮な食品から、工業生産品へと大きく変化しました。食事の仕方も変わり、食べる回数が何倍にもなり、これは体にとって未知のことです。アメリカの研究者によれば、1日に17回の軽食は珍しいことではありません。多くの人が、みんなでテーブルを囲む昔ながらの1日3回の食事を望んでいますが、現実にはまれなことです。

今日、食べるということは、簡単にできて、口当たりが良いことです。この不健康な食習慣は、世界保健機構(WHO)が最近公表した栄養に関する報告書にも読み取れます。肥満の増加、それにともなう糖尿病、心臓循環器の疾病、ガンのリスクの増大です。しかしWHOはこうも言っています。食事を正せば、命が救われ、寿命が延びるのだと。
それがどのようなものなのか、栄養専門家で医長のアンドレアス・ミヒャールゼン教授が教えてくれます。体がスリムになり健康になるのは、ほんの入り口です。誤った食事で病気になるように、正しい食事は病気を治すことができるのですから。

本誌の新シリーズ「食事で助ける」では、正しい食事による免疫強化、集中力の向上、また、食事療法による腸や関節、皮膚の慢性疾患の治癒についてお読みいただけます。さらに、心臓循環器系の強化、そして「ミミャールゼン・メソッド」で、毎日、順調にダイエットできるようになります。


しっかり栄養をとり、健康を維持する

RK(クリール誌):ミヒャールゼン教授、あなた自身が30代の初めには、高血圧で高脂血症でした。なぜですか?

AM(ミヒャールゼン教授):わたしはシフト制の救命医でした。タバコを吸い、運動もしていませんでした。仕事に追われていて、きちんとした食事もできませんでした。消防隊の人たちとよくグリルソーセージの屋台でフライドポテトを食べ、ケバブが好きでした。しかもばかみたいに甘いものやおやつを食べ、深夜までコーヒーをがぶ飲みしていました。

RK:肥満でしたか?

AM:肥満体質ではなかったようです。悪い生活スタイルで、血圧とコレステロールの値が上がっただけでした。肌の状態も良くありませんでした。ただ、心臓科で仕事をしていると、若い時にコレステロール値が200を超え、血圧が高いことは、喜ばしいことではありません。毎日、それが何を意味するか目の当たりにすることになります。卒中や心臓発作のリスクがどれだけ高いか分かります。

RK:何を変えましたか?

AM:基本的には、自分が何をすべきか分かっていました。少しづつ全粒食に替え、野菜やフルーツをたくさん食べました。すると血液の数値が正常化し、15年前からは完全なベジタリアンです。

RK:スリムな体であっても、偏食だけで病気になるのですか?

AM:もちろんです。肥満でなくても、食事に問題があるかもしれません。もちろん遺伝もありますし、運動もかなり影響します。でも健康にとって極めて重要なのは、食事の仕方です。

市場の野菜・果物
肉・ソーセージ

RK:大規模に行われた研究によれば、私たちドイツ人は、寿命の点でヨーロッパのテールライト(最後尾)です。なぜでしょうか?

AM:南北で大きな差があることは明らかです。南へ行くほど寿命が長くなります。スペインとイタリアが最長です。昔ながらの地中海料理が中心で、野菜やフルーツ、ナッツとハーブを食べています。異論を唱える人がいるかもしれませんが、太陽の光や昼寝によるものでしょう。でも、ドイツ人よりも健康な食事に努力しているスカンジナビア諸国が続いているのも目につきます。確かに食事だけではありませんが、わたしにとっては主要な要因です。

RK:なぜ私たちドイツ人は、もっと健康な食事ができないのでしょうか?

AM:ドイツ料理は、肉と乳製品が中心です。地中海料理はそもそもがもっと健康的です。でも私は、まだパーセンテージではっきりしているわけではありませんが、私たちは変化していて、変化することに前向きであると思っています。健康な食品が、とても好まれていて、広がりをみせています。数々のオーガニック製品や、ルッコラやアボカドのような生鮮食品は、私が子供の頃にはありませんでした。ニンニクでさえあまり見かけませんでした。

RK:慢性疾患に食事はどれだけ関係するのですか?

AM:もちろん慢性疾患は複雑ですが、50~70%と考えていて、これは手堅い数値です。病気は食事だけが原因ではありませんが、食事が大きく関わるということです。私が30代初めでそうだったように、巡り巡ってくるものです。例えばストレスによるものです。相互関係があるものだからです。ストレスを抱えていると、食事に注意が向かなくなります。

RK:西洋医学の同僚の医師から患者さんを紹介されることがあると思いますが、どんなケースが多いですか?

AM:よくあるのは、肥満や高血圧、ストレスを抱えている人です。長い間これに歯止めがかからず、糖尿病であることも多いです。患者は糖尿病を抑えるために4~6種類の薬を飲んでいます。でも、薬の作用で代謝が一部異常になりがちで、そうなると悪循環のど真ん中です。これが5~6年続くと、心臓発作や卒中のリスクが高い心臓循環器系の病気になります。そのうち肥満のせいで膝の関節炎も加わります。そうなるとかかりつけの医者にはもう何もできません。

RK:その時は、ライフスタイルを変えることだけが助けでしょうか?

AM:ええ、でもこれは典型的なケースにすぎません。他には多角性硬化症やリューマチ性炎症、クローン病や潰瘍性大腸炎のような腸の病気など重い慢性の炎症性疾患の患者もいます。多くの患者が薬の副作用に大変苦しんでいます。こうした薬は病気の治療に必要ですが、重い副作用があるものもあります。例えばコルチゾンです。骨粗鬆症や肥満、ある種の目の病気にかかりやすくなります。治療医のジレンマです。副作用を考えると、そもそも治療のための薬を処方できなくなってしまいます。

RK:治療での食事の役割は何ですか?

AM:私たち治療のひとつは断食と食事を変えることで、それがまず第一です。平均して10~14日間で変えていきます。大事なことは、患者がその2週間で体調の改善を体験することです。ようやく、悪くなる一方ではないということです。自己治癒力が活性化することで、続ける勇気になります。退院後も、菜食の全粒食とインターバル断食をお勧めしています。この方法は、健康な人の病気の予防にも理想的です。

市場のハーブ
市場の果物

RK:ミヒャールゼン教授は治療医であり、科学者でもあります。現在実施している臨床試験では、断食の治癒力を証明することがテーマです。最初の試験結果をちょっとシェアしていただけませんか?

AK:様々な試験をしていますが、その中に化学療法を受けているガン患者の断食に関する試験が2つあります。患者は3日間断食するだけで、それ以上長くはしません。また、多角性硬化症、リューマチ、高血圧の患者で、7~10日間の断食の効果を調べています。リューマチの試験では、すでに明確な傾向が出ています。2、3日後に非常にはっきり改善します。むくみと痛みの減少が明らかに認められます。断食後も効果は数か月続きます。スリムな体系の被検者でも良い結果が出ています。
高血圧でも、明らかな効果が認められます。特に面白いのは、血圧と腸の健康にはっきりとした関連性が示されたことです。腸内細菌が最も変化した被験者の血圧が、最も大きく低下しました。

RK:多くのラボの研究では、ほぼすべての生物や動物で、断食によって寿命が延びるという結果がでています。これはどのように説明できるのでしょうか?

AM:確かに、断食は体を老化させる数々のプロセスにブレーキをかけます。断食が実際に寿命を延ばすのかは、まだ完全に解明はされていませんが、典型的な老化による疾病を減少させるようです。おそらく断食には2つの主要な要素があります。私たちに有害なのは、過食と多食であり、特に動物性たんぱく質の多い食事です。結果として、インスリンのようなホルモンによって、体がたくさんの成長や炎症のシグナルを出すことになります。代謝プロセス全体がハンドルを切り過ぎたような状態です。しかもこれが細胞のひとつひとつで起こっています。これは超高速回転するモーターのようなものです。細胞のエネルギー機構が消耗しすぎて、細胞の老化がどんどん進みます。その一方で、食事に休みがないと、必要なオートファジー、つまり体の自己修復メカニズムを起動させることができません。細胞は消耗しすぎるだけではなく、作業を休む時間もありません。それに比べて、断食している場合は、自己修復が大変よく機能します。食事を3回から2回にしただけでも改善します。インターバル断食で14~16時間何も食べない場合も同じです。5日以上断食すると、強いオートファジーの衝撃が起こります。すると両方が機能して、つまり最良の細胞修復が続き、しかも細胞は絶え間ない消耗にさらされることはありません。

RK:本誌にはもうひとつテーマがあり、それは良い眠りです。食事は夜の睡眠にどう影響しますか?

AM:それは重要なテーマですね。面白いことに、睡眠と覚醒のリズム、そして食事と代謝のリズムには深いつながりがあります。細胞には体内時計があって、特に2つの因子でコントロールされています。光と闇、つまり昼と夜、そして食事の時間です。最新の研究では、長距離フライトで時差ボケになるだけではなく、食事のリズムを破っても起きることが分かっています。自分でも気づくことがあるでしょう。リズムを破って食事をすると、確かにあまりいい調子ではありません。たとえばいつもの習慣とは違って深夜に食事をすると、よく眠れません。体調を良くするには、食事のタイミングが極めて重要です。インターバル断食をすると、ほぼすべての試験で、非常に良く眠れるという結果もでています。インターバル断食は、睡眠障害を改善する優れた方法です。
2番目に大きいテーマは、もちろん、睡眠障害に悩む人のほとんどが、不安や悩み、ストレスを抱えていることです。よく眠れなくなったら、警告信号です。瞑想、ヨガ、太極拳など、お気に入りのリラックス法をお勧めします。

RK:眠る前の飲み物でお勧めはありますか?

AM:カルダモン入り「ゴールデン・ミルク」です。牛乳ではなく、アーモンドミルクか豆乳にしてください。メリッサティーもとてもいいです。でも、夜にお茶をたくさん飲むと、トイレの心配があります。それで眠りがさまたげられます。ティーポットたっぷりの量よりも、1杯の濃いメリッサティーをお勧めします。他にも鎮静作用のあるハーブで、トケイソウやホップなどです。もちろんクナイプの足湯もあります。湯たんぽで温かくするのもいいですが、約36℃の足湯で温まる方をお勧めします。

Reformhaus Kurier 2019年11月号 掲載記事より

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