西洋オトギリソウは、ドイツで「2015年の薬用植物」に、今年は「2019年のメディカルハーブ」に選ばれました。西洋オトギリソウの有効成分は、気分を明るくし、不安をしずめ、イライラや不眠症状を緩和します。標準化された西洋オトギリソウ抽出物は、軽度・中度のうつ病に対する植物薬品として認可されています。確かに植物薬品は、化学合成の「抗うつ薬」よりも作用はおだやかですが、そのかわり副作用は光線過敏のリスク以外はほとんどありません。医師に相談して西洋オトギリソウを用いることで、化学薬品の使用を控えることもできます。
太陽を好むこのハーブは、聖ヨハネの日(6月24日)にちなんで名付けられました。この時期に明るい黄金色の花を咲かせ、長いブラシのようなおしべが特徴的です。今日でも行われている夏至祭では、大人も子供も花冠をつけて、焚火のまわりで踊ります。ラテン語の学名で2番目の「ペルフォラトゥム」は、抜き穴(パーフォレーション)をつけるという言葉から派生し、楕円形で穴だらけに見える葉のことです。葉に穴が開いていると勘違いしてしまいますが、実はこれは精油がつまった小さな分泌腺です。伝説では、この薬草には悪魔を超える力があったため、怒った悪魔がこれに三叉槍を打ち込んだと言われています。花に見られる黒い点は、色素のヒぺリシンです。
多数の研究が行われているにもかかわらず、西洋オトギリソウが気分を明るくするメカニズムについては、今日までまだ正確には分かっていません。開花期に茎の先端部分を収穫すると、そこには様々な薬理作用のある内容成分が豊富に含まれます。とりわけヒペルフォリンとヒペリシンの両成分が重要な働きをするようです。ヒペルフォリンは、うつ病の時に不足する神経伝達物質で「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの作用を強めると考えられています。ヒペルフォリンには抗菌作用もあります。そのいっぽうで、ヒぺリシンなどのフラボノイドには、抗炎症作用があります。ヒぺリシンは肌の光線過敏リスクの原因でもあります。肌が白く日焼けしやすい方は、長時間日光に当たらないようにしましょう。2週間使用したら医師に相談するようお勧めします。
内容成分がカクテルのように混じりあい、明らかに幅広い効果を発揮するのでしょう。西洋オトギリソウのオイルを外用薬として使用すれば、肌をおちつかせ炎症を抑えますし、乾燥したカサカサのお肌に抜群の効果があり、神経性皮膚炎の赤みやかゆみを抑えます。昔から、小さな傷や火傷に使われてきました。